今回は『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』の感想をお伝えします!
LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン あらすじ
極寒の地、ロビエト連邦の空港に降り立った銭形。
しかし、そこで爆破テロが発生します。
テロの容疑者は、なんと大泥棒・ルパン三世。
しかし、そこにはもう1人のルパンの影がありました。
やがて銭形は、国を巻き込む大きな陰謀に辿り着くこととなります。
LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン 感想【ネタバレ有】
とにかくカッコ良すぎる銭形!
まず言わせてください。銭形警部、カッコ良すぎる!!!
『銭形と2人のルパン』は、銭形ファンのための作品と言っても過言ではないほど、彼の魅力がこれでもかというくらいに凝縮された物語でした。
とにかく、最初から最後まで銭形警部の“漢気”と“執念”が全開。
ルパンシリーズにおける銭形といえば、コミカルな描写も多いキャラクターですが、本作では全く違います。
ハードボイルドな刑事としての姿が強調され、まさに“追う者の美学”が感じられるのです。
例えば冒頭、列車内でルパン(本物)の変装を見抜く場面。
あの一瞬の緊張感と銭形の鋭いまなざしに、完全に心を持っていかれました。
「目がすべてを物語る」
そのセリフひとつで、銭形の洞察力と経験の厚みを感じさせてくれます。
また、敵として対峙していたカラシコフをかばって大怪我を負い、結果的に彼女に一目置かれる流れも最高でした。
国家の利害を超えて、ひとりの刑事として、正義を貫く姿。
その生き様には、どこか人間臭さと崇高さが同居していて、深く胸を打たれます。
銭形の語る『正義』
本作を通して印象的だったのが、銭形の口から幾度となく語られる『正義』という言葉です。
そのひとつひとつが軽くなく、血と汗と信念で裏打ちされた彼の『生き方』としての正義でした。
彼の正義は決して理想論ではありません。
現場で泥にまみれながらも、不正や暴力に屈しない。
傷だらけになっても、命を賭けても、自分の信じるものを守ろうとする。そういった姿勢に、ただの警察官ではない“信念の人”としての銭形が浮かび上がってきます。
爆破に巻き込まれても、鉄柵が身体を貫いても、血まみれのまま偽ルパンを追い詰める執念。
それは狂気にも近いものがありますが、それでも彼を突き動かすのは、自分の中にある“正義”を絶対に曲げないという信条です。
ルパン(本物)が「立場は違えど、自分と同じ何かを秘めている」と感じるのも納得できました。
2人は、似た者同士なのかもしれません。
どちらも、自らの美学や信念を絶対に曲げない“筋の通った男”なんですよねー。
偽ルパンの正体とその動機
一方、銭形と対峙するもう一人のルパン、つまり偽ルパンの存在も非常に興味深かったですね。
彼の目的は、連邦と合衆国の軍縮条約締結を妨害し、世界を再び混沌へと引き戻すこと。
しかもその背後には、ロビエト連邦の最高指導者・ブレーリンの意図が見え隠れしています。
表向きは国家レベルの陰謀の一端を担っているように見える偽ルパンですが、彼自身はその思想に染まっているわけではなさそうなんですよね。
彼の口から出てくる「退屈な世界を面白くしてやってる」というセリフ。
つまり、世界を混乱させることそのものが目的であり、背後の政治的目的や組織の意図は彼にとって二の次なのかも……。
正義も悪も、美学すらもない。ただの退屈を嫌う男。
その動機が逆に非常に不気味で、得体の知れない恐ろしさを感じました。
ここで思い出されるのが『ルパン三世 ルパンVS複製人間』に登場したクローン技術です。
もしこの偽ルパンも、何らかの意図で造られた複製人間だとしたらどうでしょうか?
彼が本物のルパンに瓜ふたつであることにも納得がいきます。
造られた存在としての自分自身を受け入れられず、結果として世界を壊すことで自分の存在価値を確かめるようになったと考えると、彼の行動が悲劇的にすら見えてきますね……。
自爆という選択の意味
物語のラスト、偽ルパンは自らの命を絶つ形で、その狂気に幕を下ろします。
この展開も、私にとっては非常に印象的でした。
彼の中には、“自分の存在に価値を見出していない”という虚無感が存在していたように思います。
自爆を選ぶという極端な選択は、彼の人生観や自己認識を端的に表しているのではないでしょうか?
「世界を面白くしてやる」と言いながら、その裏には“自分がこの世界に属していない”という疎外感が見え隠れしていた。
だからこそ、命を投げ出すことにもためらいがない。
刹那的に生き、刹那的に死ぬ。まるで“世界に喧嘩を売るためだけに生まれてきた男”でした。
それに対して、どれだけ傷つこうと決して諦めず、命を懸けて正義を貫く銭形の姿は、強烈な対比として胸に刻まれます。
銭形は、この世界にしがみつくようにして生きる男。
一方、偽ルパンは、世界そのものを拒絶し、破壊することでしか自分を保てない男。
この対比が、物語全体を通して感じた『深み』の正体なのかもしれません。
まとめ
本作を通して、改めて銭形警部というキャラクターの奥深さに気付かされました。
ぶっちゃけ以前は“ルパンにいつも振り回されている滑稽な刑事”というイメージだったんですけど、本作の彼は全く違いますね。
圧倒的な信念、鋭い頭脳、そして体を張る覚悟。
彼こそが、ルパンの良きライバルであり、時には鏡のような存在。
ルパンという存在を最も深く理解し、最も真っ向から対峙する資格を持つ男です。
『LUPIN THE IIIRD』シリーズが持つダークでシリアスな世界観の中で、銭形という人物がいかに光る存在か。
そして、『正義』と『存在意義』というテーマをこれほどまでに深く掘り下げた物語は、ルパンシリーズでもそう多くはないでしょう。
銭形のファンはもちろん、ルパンシリーズに新たな切り口を求める人にも、ぜひ観てほしい作品です。
私は観終わったあと、しばらく銭形の姿が脳裏から離れませんでした。
いやもうね、惚れてまうやろ!